アンティーク家具や小物に囲まれた素敵な自宅兼アトリエで、布小物の制作を行う堂前さん。アンティーク家具店をオープンした友人に「何か店に置く小物を作って」と依頼されたのが、そもそもの始まりだったとか。「昔から趣味でちょこちょこと作ってはいましたが、美術系大学を出たわけでもなく、そんな道に進もうなんて全く考えてませんでした」。
なのに、いつしかモノづくりのことばかり考えるように。その頃、広告代理店では、営業職を経て、制作部でハードな仕事に追われる毎日。いつしか堂前さんの心の中では、モノ作りの比重がとても大きくなっていました。
また結婚により、新生活もスタートしていました。「このままでは心も身体も疲れ果ててしまう。制作しながらできる仕事へ転職しよう」そう考えた堂前さんは、7年間勤務した会社を退職します。するとなんと、その直後に夫が名古屋に転勤となり、新たな地で、制作に没頭する日々を送ることができたのです。

材料となる布はアンティークショップやネットショップ、のみの市などで手に入れるそう。デザインは、取り扱い店との話し合いの中から自然にわいてくることが多いとか。使い手からの意見も大いに参考になります。「母子手帳ケースだと、子供がいる友人に聞いて、こんなサイズで、こんなポケットがいるんだなとか、ひとつひとつが手探りなんです」。ありそうでないもの、欲しいのになかなか見つからないものを提供したい、と堂前さん。「あまりにもアート、アートしすぎて、生活の中で浮いてしまうものじゃなく、さりげなく部屋にあっても邪魔にならず、でもセンスのいいもの、というのが理想なんです」。


「毎日が必死」。うらやましいような空間で、自由に創作しているように見える堂前さんから、何度も出た意外な言葉です。「日中はほとんど閉じこもって、誰にも会わずに制作してますから、人とかかわる機会はほとんどないんです。騒々しい場は苦手だし、あえて出てもいかないんですけど・・・」。煮詰まってしまった時には、7年勤務していた頃のハードさを思い浮かべるそう。「こんなもんじゃなかったでしょ、と自分に鞭打ったりして」。美術系の大学を出て作家になっていたら、こんな厳しい感覚は身に付かなかったかもしれないとふり返る堂前さん。OL時代に培ったこの財産が今の堂前さんの確かな土台になっています。最近では、取り扱い店での評判もよく、新規の店が増えたりと、日頃のコツコツがうれしい反響になって帰ってくるようになってきました。「特に自分から売り込みをすることはないんですが、一生懸命仕事したものを誰かが見ていてくれる。その評価が私にとっての営業かな、と思っています」。

それでも「お金のことを思うと、こんな中途半端な仕事ぶりでいいのか」と自問自答してしまうこともあります。「自立できていない自分がはがゆく、主人に申し訳ないなと」。そんな堂前さんに、ご主人が語ったのは「心配してる暇があったら、制作したらいい。せっかく自分に与えられた道なんだから、突き進んでみたら」。だからこそ、ご主人のいない日中に仕事をテキパキとこなし、朝食夕食、休日は、ゆったりと2人の時間を持ちます。応援してくれる心に応えながら、気持ちいい生活を共に過したい、これが堂前さんのご主人への感謝のあらわし方なのです。


積極的なネットワーク作りは得意でないという堂前さんですが、ウーマンスタイルでは新たなチャレンジも。マイホームを楽しむためのブログ「お家がいちばん!」では、レポーター役として持ち前のインテリア通ぶりを発揮しています。「ふだん会えないような人にも会え、知識も増えて、とっても楽しいです。私のように家仕事で閉じこもりがちな女性に、こんな機会がもっと増えればいいなと思いますね」。ゆくゆくは、自分の工房を兼ねたショップを作って、そのスペースで教室もできたらいいな、と夢を語る堂前さん。時には壁にぶつかりながらも、自分を見失わずに1本の道を着実に歩いてきた彼女なら、大丈夫。そう自然に思えた今回の取材でした。

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| おもてなし 庄田晴海さんの九谷の器と金属の小皿でティータイム。お菓子は「ビゴの店」のラスク。お客様にも、おうちカフェの気分で楽しんでほしいから。 |
机回り 毎日向かう制作机だからこそ、気持ちよく使いたい。アートフラワーや大好きな「星の王子さま」を置いて心なごむスペースに。 |
お気に入り 「ミナ ペルホネン」の鳥バックはちょっと奮発して自分へのご褒美。独特のデザインは2年たった今も飽きない。時には思い切った行動で日々をリフレッシュさせる。 |
(文・写真/塩田 陽子)