【File012】香りスタイリスト Saikoさん

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香りスタイリスト Saikoさん

《プロフィール》
1978年富山県生まれ。大学卒業後、一般企業の事務職を経て、香水専門店の店長に。アロマの世界をさらに極めようと、インストラクターの資格を取得。27歳からはアロマセラピー講師として活躍しながら、リゾートホテル「リバーリトリート雅樂倶」のスパ施設に勤務し、1000人以上のマッサージ施術経験を積む。30歳で結婚し、金沢へ移住、翌年出産。家事育児に専念のため、一時休業後、2013年アロマサロン開業。現在はアロマ空間コーディネートをはじめ、パーソナルフレグランス講座などのレッスン講師として活動中。
■HP create aroma space Rauha -ラウハ-

インタビュー

人の本能に働きかける アロマの魅力を伝えたい

人や空間、季節などさまざまな要素からイメージを膨らませて香りをコーディネート。心に響く香りを作り上げることが喜びです。

香りが広がるように、まわりの雰囲気を一瞬にして明るく華やかに変えてしまうSaikoさん。親しみやすい気さくな人柄もあいまって、個人のお宅、保育園、幼稚園などで主催するアロマレッスンでは参加者の心をとらえて離しません。「アロマオイルを買ったけど使い方がわからない」「自分だけの香りを作りたい」とアロマに関心はあるものの一歩踏み込めないでいた女性たちに、香りの調合方法やアロマクラフトを指導し、その魅力を伝えています。

Saikoさんのもうひとつの活動の柱は「アロマ空間コーディネート」。家具やカーテンなどと同様、コンセプトにふさわしい香りをプラスすることで、住宅やショールーム、店舗などをよりグレードの高い空間に作りあげていくお仕事です。

「香りには、目には見えませんが本能にダイレクトに働きかける力があります。記憶に深く残るので、お客様のおもてなし、企業や店舗のブランディングに非常に効果的なんです」と語るSaikoさん。企業や店舗のオリジナルな香りをつけたDMや来場記念プレゼントなど、斬新なアイディアも注目の的。その活動の場は、ナイトミュージアムや朗読会などますます幅広くなってきています。

香水店からアロマの世界へ 忙しくも充実の日々

神通峡温泉のリゾートホテル「リバーリトリート雅樂倶」でアロママッサージを担当。お客様には芸能人や著名人も多く、接客の心がまえもここで学ばせていただきました。

Saikoさんと香水の関わりは24歳の頃から。大学卒業後に就いた事務職が肌に合わず、イオン高岡の開業チラシで見つけた香水専門店の求人に応募。いきなり店長として採用され、見事に繁盛店に成長させます。「持ち前の負けず嫌い精神でがんばりました。全てを一任されて行動でき、成果が目に見える環境も自分に合ってましたね」。

店の業績を上げつつ、香水そのものにものめり込んでいったSaikoさん。忙しい合間をぬって教室に通い、アロマインストラクターの資格を取得。27歳で香水店を退職し、レッスン講師としての道を歩き始めます。さらには指導講師の薦めで、市内のリゾートホテル「リバーリトリート雅樂倶」のアロマセラピストとして働くことに。

「午前はレッスン講師、午後は施術でびっしり埋まったスケージュールをこなしていました。ホテルでは3年間で1000人以上のお客様のマッサージを担当。後の起業はこの経験なしにはあり得ませんでした」とSaikoさん。当時プロポーズされていたにもかかわらず、楽しさと充実感のあまり、「もうこのまま結婚したくない」とすら考えていたそうです。

そんな一本気な彼女を心配するご両親の説得もあり、30歳で結婚を決意。金沢の電器店に嫁ぐことになります。

育児と家業に自分を見失い 思い切ってサロンを開業

結婚後すぐに妊娠、出産。子育てをしながら家業を手伝ううち、バイタリティーのあるSaikoさんは義父母からも頼りにされるようになっていきました。「結婚する時の夫との約束は『アロマの仕事は一旦休業するけれど、絶対に再開する』。育児中も大阪のセミナーや通信講座で勉強していたのに、状況はどんどん再開とは逆に向かっている気がして。ある日とうとう爆発してしまったんです」。

このままでは活躍している仲間たちやアロマの今の流れに遅れをとってしまう…焦りが高じたSaikoさんは、2013年5月にサロンを開設します。メゾネットを借り、家具や備品にも吟味を重ねたアロマサロン。「セラピストの経験には自信を持っていましたし、生産者が見える日本のアロマオイルにもこだわっている。それで十分にやっていけると思ったんです」。

ところが予想に反して、DMやCMを打っても反応はいまひとつ。初期投資に見合うまでの来客数になかなか伸びてきません。迷いの時に目にとまったのが、友人のフェイスブックで知り、登録したウーマンスタイルの「起業塾」。「女性のクチコミ力をどのように販促に活用するか」というテーマに心魅かれ、早速参加してみることに。4~5人の女性企業者たちと真剣にディスカッションを重ねるなか、Saikoさんの心を強くゆさぶったのがこの言葉でした。
「1本立つものがないと、個人起業者は埋もれてしまう」。

"自分の1本"を探して半年 感動の原点「香り」に行きつく

アロマが香る入浴剤バスボム。クラフトレッスンでは、可愛いアロマアイテムを豊富に用意。自分用やプレゼントに喜ばれています。

「自分だけの"1本"とは何だろう。そもそも私は何がしたかったんだろう」。
迷いはそれから半年近く続きました。顧客の獲得しやすさからアロマサロン起業を選んだものの、そのせいで競合店が多いのも事実。これまでの自分をふりかえってみると、本当にやりたかったのは、目に見えないものをクリエイトし、人を感動させることのできる「香り」そのものではないか。

気づいてからの行動は早く、2014年1月から「香り」に特化した活動をメインに再スタートします。オリジナルアロマ作りのほか、クラフトコンテスストの受賞歴を活かし、アロマジェル、アロマボムなどのクラフト教室を開始。企業や店舗向けには、首都圏ですでに注目されている「香りマーケティング」を提案する戦略を立てました。「アメリカでは商品の香りが出るDVDなど、香りをツールとした斬新なプロモーションが盛んになりつつあります。『北陸で大々的に活動している人がまだいないこの分野に、出るなら今だ!』と感じたんです」。

不思議なことに1本を立てると、「それ面白いね」「これからの分野だね」と周囲の反応が明らかに変わってきました。「起業塾」で知り合った仲間たちからクチコミで伝わるなど、新しい企業や顧客とのつながりもどんどん生まれていったのです。

アロマの可能性を広げ北陸の先駆者に!

パナホーム県庁東住宅展示場で開催した、おしゃべりcafeのアロマレッスン「香りでお家をデザインしよう!」。自宅でのアロマ活用法やオリジナルルームフレグランス作りをお伝えしました。

「少し遠回りしたけれど、おかげで自分が本当に発信したいことに立ち戻れました」とSaikoさん。香りスタイリストとして、まだ誰も歩いていない道を切り開いていくと覚悟を決めています。「アロマ業界の個人起業はマッサージが主流で、コーディネーターをメインに活躍している人は大都市にはいても北陸にはほとんどいません。目に見えない香りに価値を認め、対価を払う習慣が企業にも個人にも浸透していないからだと思います。私はその効果を明確にして、北陸におけるアロマのイメージをもっと高めていきたい。アロマビジネスが成功すれば、レベルも向上し、裾野も広がっていきます。ゆくゆくはコーディネーターのプロ養成も考えています」と壮大な夢を語ります。

ウーマンスタイルには、おしゃべりCafeの講師として関わりながら、一会員としてこれからもどんどん楽しんでいきたいそう。「他でやっていないことを独自に開拓していくウーマンスタイルさんの挑戦にシンパシーを感じるんです」。

成功するかどうかわからない、前例がないことをやるには勇気がいります。だからこそ、人はその勇気にパワーを感じ、応援したくなります。さまざまなプランやアイディアを持つSaikoさんは、語るだけでなく"即実行"の人。香りに関するどんな要望を相談しても、元気な笑顔で「やりましょう!」と引き受けてくれる彼女は、これからもみんなの“夢請負人”として活躍していくことでしょう。

ある1日の過ごし方

05:30
起床
06:00
身じたく、掃除、朝ごはん準備
07:30
子ども起床、電器店の開店準備
08:30
子どもを保育園へ
09:00
仕事先へ
17:00
保育園へお迎え、買い物
18:00
夕食、店の片付け、家事
20:00
子どもと入浴、子どもと遊ぶ
21:30
ふとんに就く(子どもが寝付くまで相手をする)
22:30
そのまま就寝

わたしのお気に入り

オリジナル精油棚

自分で作った調香棚です。オーダーアロマオイルなどの作成時に自分が調香しやすい棚をずっと探していたのですが、見つからず作ってしまいました。

強力な助っ人!業務用ディフューザー

シルバーの持ち手のついたバッグのような形の拡散器具で、500平方メートルの空間を香りで満たすことができます。イベント時に大活躍してくれる大事な商売道具です。

お気に入りスポット「コーヒーハウス ワイー」

いつも笑顔で迎えてくれるマスターとママが大好きで、たくさん話を聞いてくださいます。店に集う常連の方とも仲良くなれるとてもいい空間。しんどい時は必ず行ってリフレッシュさせてもらっています。

(文・写真 塩田陽子)