【File006】フラワー&テーブルコーディネーター 桑野亮子さん

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フラワー&テーブルコーディネーター 桑野亮子さん

《プロフィール》
1971年金沢市生まれ。市内で夫、2児と4人暮らし。幼稚園教諭を務めながら、活け花、フラワーアレンジメントを習得。
2000年、日本フラワーデザイ ナー協会講師資格を取得後、生花店や自宅でフラワーアレンジメントレッスン主宰。翌年、日英フラワーアレンジメント協会インストラクター資格取得。’07 年、食空間プロデューサーの丸山洋子氏に師事し、TALK食空間コーディネーター資格取得。’08年からは、フラワーアレンジメントとともに、テーブル コーディネートレッスンも主宰している。

インタビュー

こだわりの自宅アトリエを持ち、花、テーブルに関わる今。

第2回ウーマンスタイル交流会で、リース作り教室の講師を務めた桑野さん。わかりやすく丁寧な指導がとっても好評でした。

お洒落な家々が立ち並ぶ閑静な住宅地。その一角に桑野さんの住宅兼アトリエがあります。大きな木の扉を開けると、ヨーロッパのお宅を思わせる洗練された空間が広がっています。案内された部屋は、テラコッタの床に大きな木のテーブル、壁には美しい器が飾られたアンティーク調の棚、窓外には手入れの行き届いた英国風のお庭…。そこはフラワーアレンジメントやテーブルコーディネートのレッスンが行われるアトリエでした。

「家族のくつろぎスペースとは全く別な空間にしたいと思い、玄関からすぐに入れる場所に作りました。室内の水回りや、水がこぼれてもいいタイルの床など、いろいろと工夫したんですよ」と桑野さん。自宅以外にカルチャーセンターでも教室を主宰していますが、生徒には、このアトリエでのレッスンがとりわけ人気なのだといいます。

そのほか、リースやフラワーアレンジなどのイベント講師などでも大活躍の桑野さん。季節の花の優しいあしらい、家庭で活かせるセンスのいいテーブルコーディネート。今回はそれらを生み出すスペシャリストのこれまでをたどります。

"自分の仕事を俯瞰で見てみたくて…

ウーマンスタイル交流会で、参加者が教えていただいたリース。ユーカリや小花、木の実をあしらい、香りや安らぎを感じる趣向です。

桑野さんの花との出会いは、幼稚園教諭として働き始めた20歳の頃から。活け花、フラワーアレンジメントと和洋両方の花を学び、熱心に取り組んでいました。26歳で結婚退職してからも、さらに勉強を続け、2000年にフラワーアレンジメント講師としていよいよ独立することになりました。

デビューは生花店でのレッスン。アレンジの知識や経験はあるものの、カリキュラム、花や花台などの道具もすべて自分で用意しなければならず、当初は四苦八苦の日々だったそう。「先生の薦めもあり、やります!と始めてしまいましたが、当時は怖いもの知らずだったんでしょうね」と懐かしくふり返る桑野さん。とはいえ、もともと熱心で努力家の彼女のこと、次第にその実力を認められ、教室数も増えていきました。

そして、独立から2年目のあるガーデニングイベントで、桑野さんは今までとは違ったフラワーアレンジに出合います。「私が学んだのは、使う花もアレンジの仕方もきっちりとした型のあるスタイル。ハーブや野の花を使った自由度の大きい英国流のアレンジを知って、新鮮な衝撃を受けたんです」。すぐにその先生に師事し始め、それからの彼女のアレンジはまたさらなる変化を遂げていきました。

「企画して動く」。新たな側面が開花。

取材当日のテーブル。テーマは「友人を招いてのアフタヌーンティー」。シンプルで落ち着いたナチュラルスタイルで表現されています。

教室の仕事も順調だった’04年、桑野さんは待望のお子さんを身ごもります。妊娠中、ふと気になり出したのが「食」のこと。家族が増えるにあたって、健康のための食事や食育、そして家族で囲む食卓のセッティングに俄然興味がでてきたのです。勉強しようと、地元のテーブルコーディネート教室にも通ってみましたが、求める内容ではありませんでした。そのうち、出産に備えて教室を休止。’05年に第1子出産、翌年には第2子出産と、めまぐるしい日々の中、心にはいつもくすぶる思いがありました。

そんな桑野さんが動き出したのが’07年。かねてから憧れていた食空間プロデューサー丸山洋子さんの名古屋教室に通おうと決断したのです。2児の育児の合間に、毎月1回電車で通いながら、1年後には食空間コーディネーターの資格を取得。2年間で起業スキルまで盛り込んだマスタコースを修了することができました。

「とにかくがんばった、がんばれた時期です。先生は今でも困った時に電話で相談できる頼もしい方。迷った時には『大丈夫』と背中を押してくださるんです」。思いきって挑戦した新たなステップ。それは花への考え方にも大きな影響を与えていたことに、桑野さんは後で気づくことになります。

学ぶことで次々開いていく扉。自分を探しながら進む

自宅の庭に咲く可憐な花をテーブルに。さりげなく飾るだけでも、部屋の雰囲気を一新させてしまう効果があります。

’08年、フラワーアレンジメント教室と同時に、テーブルコーディネート教室も開催するようになった桑野さん。自分でコツコツと集めた食器を教材に、普段の生活で気軽にできるコーディネートを提案していくようになりました。「金沢ではまだテーブルコーディネートというと"高級でゴージャス"と思い込んでいる人も多いんです。でもレッスンに来られると変わっていきますね。自宅にある食器の組み合わせ次第で、自由で楽しい演出ができると知って、どんどんチャレンジされるようになるんですよ」。

そんな桑野さんにも変化がありました。「以前は花は玄関に置くものと思い、それにふさわしい豪華なものをよく作っていました。でもテーブルを学ぶようになってからは、"花はあしらいの一つ"なのだと知りました。たとえ野の花、庭に咲く1輪でも、効果的な使い方があるのだと」。

丸山先生の言葉の中で「テーブルコーディネートは自分さがし」というフレーズがひときわ印象に残っているという桑野さん。型を学んだら、今度は自分の可能性を模索し続ける。変化を恐れないその姿勢が、彼女を潔く前進させているのかもしれません。

家族のためのテーブル 目指すのは「おもてなし」

桑野さんにも忙しさによるストレスや悩み事を抱える時があります。そんな時、相談にのってくれるのがご主人。「愚痴を静かに受け止め、きちんとしたアドバイスもしてくれる。だからここまでやってこられたのだと感謝しています」。

4、5歳のお子さんを育てながらがんばる桑野さんを、ご主人はきちんと見つめてきたのでしょう。だからこそ、いつも桑野さんのテーブルコーディネートの基本には「家族」があります。誕生日やクリスマス、お祭り…家族の記念日を、心に残るとっておきのものにしてあげたい、そんな思いの表現なのです。「お金をかけなくてもいいんです。ランチョンマットや庭の花を使って、"気持ちをかける余裕"を持つだけでずいぶん違ってきますよ」。

将来的には、コーディネートに料理をプラスした「おもてなし」の提案もしていきたいという桑野さん。ウーマンスタイルには「家族の健康を考えたクイック献立や、野菜をおいしくふんだんに食べられる献立の料理教室を」との希望です。料理まで広がる桑野さんのコーディネートは果たしてどんなものに?私たちの想像を超え、さらに楽しくワクワク感あるスタイルに進化しているのは間違いなさそうです。

ある1日の過ごし方

06:00
起床、お弁当作り、朝食
08:30
子どもたちを幼稚園へ、家事、レッスン準備
10:30
テーブルコーディネート、レッスン
13:00
昼食、自分の時間
15:00
幼稚園お迎え、子どもたち習い事送迎
17:00
買い物、夕食準備
19:00
夕食、お風呂、家事、レッスン準備
23:30
就寝

わたしのお気に入り

自分にご褒美

就職してから結婚するまで、毎月1つずつ揃えた大好きなウェッジウッドの器。今の自分の原点になっているという。

お子さんたちの絵(母の日)

まだ幼稚園児のお子さんたち。レッスンのテーブルをうらやましそうに見ているので、いつかは本物の食器で楽しんでほしいそう。

アトリエ

自宅のレッスン専用室。住宅会社の提案などで理想に近い仕上がりに。水回りとタイル床が使いやすく便利 。

(文・写真 塩田陽子)