《プロフィール》
1967年東京都生まれ。金沢市で夫、2児と4人暮らし。高校の漫画研究会に所属し、同人誌でコママンガを発表し始める。アニメーション制作会社勤務を経て、1999年にイラストレーターとして独立。販促向けの各種イラストのほか、結婚式のウェルカムボードやサンクスボードなども手掛ける。
’09年に「第 1回石川まんがコンテスト」で「代々木アニメーション学院賞」を受賞。’10年には、北陸鉄道の公式キャラクターに自らが考案した「あさちゃん」「いしたん」が選ばれる。現在、石川線でラッピング電車「いしたん電車」が運行中。
インタビュー
自作マンガの登場人物がローカル線の公式キャラに!
この春から、北陸鉄道石川線にお目見えしたラッピング電車「いしたん電車」。その車両に貼られた愛らしいキャラクター「いしたん」の生みの親が、今回ご紹介する新矢さんです(浅野川線の公式キャラ「あさちゃん」も彼女の作品)。
公式キャラに採用されたのは、’09年、石川県を題材にしたマンガを公募するコンテストで、浅野川線をテーマにした自作マンガが入賞したことがきっかけでした。「保育園児の長男が大の電車好き。内灘出身の主人も幼い頃から乗っていた浅野川線にすごく愛着があって、その影響で関心を持つようになりました。調べてみるといろいろとエピソードもあって、私のマンガでローカル線をもっと盛り上げたい!と俄然やる気になったんです」
出来上がったマンガでは、少女あさちゃんを案内役に、浅野川線の歴史やユニークな特徴を紹介。誰もが読みやすく親しみやすい作品は、公共交通促進を進める自治体の目に止まり、「公式キャラクター」へと採用されたのです。
イラストレーターとして独立。結婚、出産・・・そして、石川県へ転居
新矢さんがマンガに本格的に目覚めたのは高校生の頃。漫画研究会では、コツコツと描いた作品を同人誌に発表していました。「マンガ家になりたい」。そんな夢をひそかに抱いていたものの、収入の定まらない職種ゆえに断念。高校卒業後には印刷会社の電算写植、アニメーション会社でのアニメーター、学童保育での指導員など、さまざまな職場や仕事を経験しますが、マンガだけはずっと描き続けていました。
そんなある時、彼女に転機が訪れます。ハードな会社勤務で体調を崩してしまい入院。退院後に「時間を拘束される会社勤務はもう限界。自宅で自分のペースで仕事がしたい」と、イラストレーターとして独立したのです。翌年にはマンガ家のご主人と結婚。埼玉県の一軒家で、新矢さんはイラスト、主人はコママンガの制作という日々が始まりました。
’03年には女児、’04年には男児と立て続けに出産。’06年にはご主人の故郷の石川県へと転居…。そんなめまぐるしい時期の中でも、新矢さんはSOHOやコミュニティサイトを通じて、全国の仕事を請け負っていました。「直接、会社に出向く営業はしたことがないんです。これまでの仕事はすべてネットがつなげてくれました」。
思いを表現するハッピーボードにやりがいを感じて
現在、新矢さんがメインとする仕事のひとつに「ハッピーボード」の制作があります。結婚式のウェルカムボードや記念日に贈るボードを、人物の似顔絵入りで、しかも希望のシチュエーションで描いたものです。
ホームページでは、これまでの100枚以上の作品を見ることができます。夜景・愛車・名所・好きな野球チームのユニホーム・お姫様だっこで、などさまざまな要望に答えたイラストには、どれも幸せモード全開の新郎新婦がほほ笑んでいます。
「完成まで納得いくまで何度もチェックしていただくんですよ。人生最大のイベントに使っていただくものだから、本当に気に入ったものを手に入れてほしいんです」。結婚式のほか、金婚式や還暦などの記念に両親に贈るボードも、好きな仕事だとか。「描いているうちに、親御さんへの温かな思いに感情移入してしまって、いつもじーんときてしまうんです。納入後『両親がすごく喜んでくれました!』という感想も多くて」。子を思う親の気持ち、親が子を思う気持ち、両方にふれられるこの仕事を大切に思っている。そう語る新矢さんからは、ひとつひとつの仕事に真正面に向き合うひたむきさが伝わってきます。
エリアブログやコンテストを手掛かりにマンガで地域を盛り上げる
金沢での暮らしにも慣れ、居心地がよくなってきた’09年。新矢さんは、これまで全国規模で考えていた仕事を、ちょっと見直してみたくなったといいます。「食べ物はおいしいし、観光資源も多い、そして人情味もある。魅力的な地元をもっと盛り上げるために、何か貢献できないかなと考えるようになったんです」。
そして、地域の商店や会社のブロガーが集まるポータルサイトに、自分の仕事や日常を紹介するブログを立ち上げます。インパクトのあるイラストやマンガの魅力もあいまって、新矢さんのブログはたちまちサイト内アクセス2位の人気ブログに。
ブロガー同志の交流を通じて、県内外に広いネットワークもできました。冒頭の「石川まんがコンテスト」応募もまた地域貢献の活動のひとつで、こちらも公式キャラ認定という大きな成果をもたらしてくれたのです。
魅力的な橋渡し役が人と地域、人と企業をつなげる
「ウーマンスタイル」を知ったのも、ちょうど同じ時期。子育てや介護で閉じこもりがちな女性の声を社会に活かそうという趣旨に大いに共感し、すぐにメールを出して会員登録をしたそうです。
「石川県でこんな事業を始めた女性がいるんだ!とすごく驚いたと同時に、見つけたことがうれしかったですね。登録してからは、企業のモニター座談会で商品に対する意見を発表したり、イベントに参加したりと、ふだんはなかなかできない貴重な体験をさせてもらってます」。小さなお子さんを持つ新矢さんからは「地元企業は、子供連れで参加できるアウトドア体験やモノ作り教室を、集客に活用してみては」と、ウーマンスタイルに提案もいただきました。
昨今では、地域や企業、人をつなげるには何らかの魅力的な「橋渡し」が必要。新矢さんの親しみあるマンガやキャラクターも、今後ますます求められるようになる、と強く感じたインタビューでした。
ある1日の過ごし方
- 06:30
- 起床、朝食の準備
- 08:00
- 朝食、洗濯、掃除
- 10:00
- 仕事
- 12:00
- 昼食
- 13:00
- 仕事
- 18:30
- 夕食、家事、お風呂など
- 21:30
- 仕事
- 23:30
- 就寝
わたしのお気に入り
夢中になった漫画たち
本棚には影響を受けたマンガがびっしり。なかでも、萩尾望都や昔から今でも第一線で活躍している女性漫画家がお気に入り。
仕事の必需品
イラストを描く際には、このタブレットが大活躍。ペン型のマウスのようなもので、PC画面を見ながら制作する。
初めての公式キャラ
北陸鉄道の公式キャラクター「あさちゃん」「いしたん」。開業当時に合わせたモガ風の衣装のあさちゃん、大正浪漫メイドな衣装のいしたんどちらもカワイイ!